課題
「届いたデバイスが動かない」カスタマーが最も恐れる状況
ネットでリファービッシュ品を注文する購入者は、届いたその日に問題なく使える端末を期待しています。しかし一部の端末は画面の不具合、充電が持たないバッテリー、電源すら入らない端末など不具合があり、従来の対応はサポートに連絡して待つだけ。いつ解決するか分からない不透明さが、購入者の不安をさらに強めていました。
サービスとしてもこのような状態が多発すると、顧客体験を損なうだけでなく、会社の信頼度に影響する非常に脆い問題です。Express Replacement(翌日配送サービス) はその答えでした。従来の返品・交換よりも素早く、1日後には新しいデバイスが手元に届く。
このプロジェクトで、私はカスタマーサイドとカスタマーサポートに対応するエージェントサイドの画面の体験全体を設計しました。今回は、カスタマーサイドのExpress Replacementのリクエストフローについてご紹介します。
ディスカバリー
現場を知る人たちから学ぶ
Express Replacementは、プロダクトデザインだけで解決できる課題ではありませんでした。物流、在庫、決済、カスタマーサービスといった様々なドメインが入り組んだ業務の上に成り立っています。そこで、画面を作り始める前に、まず部門横断のステークホルダーインタビューを行い、ドメイン知識を築きました。
カスタマーサービス担当者 — 初期不良に直面した購入者が何を語り、何を恐れるのか、そしてエスカレーションがどこから発生するのか
物流・在庫チーム — 「翌日発送」に実際どれほどのコストがかかるのか、交換用在庫がどのように配分されているのか
決済・リスク管理チーム — 2台のデバイス間で販売額に差があった場合はどう対処するのか。購入者が2台のデバイスを保持したまま元のデバイスを返却しなかった場合、ビジネスがどのようなリスクにさらされるのか
インタビューを通じて、以下のことがわかりました。
カスタマー側:
届いたデバイスの不具合だけれなく、次に何が起こるか分からない不安が強い。 デバイスが不良品として届き、すでに落胆している上、これから何が起こるのかの保証がない。ビジネス側:
元のデバイスが戻る前に交換品を発送することは、実質的なコストリスクを伴う。 一時的に、ビジネスはまだ自社の資産である最初のデバイスが購入者の手元にある状態で、2台目を発送することになります。返却を保証する仕組みがなければ、「今のデバイスを使い続けながら、新しいものを送ります」というオファーは、規模が大きくなるほど財務的リスクを伴います。
課題の深掘り
カスタマーへの安心材料とビジネスリスクのせめぎ合い
このプロジェクトの難しいところは、すでにネガテイブな感情にあるカスタマーの体験をこれ以上損失せず、かつビジネス側の運用を複雑化しすぎないことでした。
カスタマーニーズ
ビジネスニーズ
すぐに使えるデバイスが欲しい
元のデバイスを回収したい
これ以上料金は払いたくない
返却されない場合の利益の損失を避けたい
素早く対応してほしい
CSエージェント側の労力を最小に留めたい
必ず使えるデバイスが欲しい
利益の損失なく、在庫を確保したい
すでにネガディブな心境にいるカスタマーに、正しく交換の手順を踏んでもらうにはどうすればいい?
エントリーポイント : 最も早い解決策として位置づける
購入者がデバイスの不具合を報告すると、選択肢が並んで表示されます。Express Replacementには「Fastest solution」というラベルが付き、いち早く問題を解決したいカスタマーの心境をサポートします。
概要 : 返品手順と新しいデバイスの到着予定日を表示
ステップ : デフォルトは確認、入力箇所は必要最低限
不具合の記録 — 対応を早めるための情報として再定義する
写真と不具合の簡単な説明は、購入者がクリアしなければならない関門ではなく、エージェントがやり取りを往復させずにリクエストを処理するための材料です。「一度で正確に対応するためにご協力ください」というフレーミングによって、単なるフォーム入力が、プロセスが前に進んでいると感じられる体験に変わります。


クレジットカードの確認:追加チャージがないことを明記
お金周りが最も対立的に感じられやすい要件だったため、最も慎重なフレーミングが必要でした。クレジットカード情報は、あくまでも元のデバイスがカスタマーによって返却されなかった場合の保証として提示しますが、「請求」ではないことを明示する必要がありました。返却期限を過ぎた場合にのみ、元のデバイスの代金が請求されます。文言では、この点を明確に、順を追って説明しています。
「口座への請求は発生しません…カードが有効か確認するため、0円の与信照会が表示される場合があります。期限内に元のデバイスを返却いただけなかった場合のみ、請求が発生します。」
このように伝えることで、あくまでもビジネス側のリスク対策として提示することで、カスタマーの信頼を失わないように工夫しました。
完了画面 —「これで手続き完了です」
最後の画面は、「今後のステップ」を開示することにフォーカスします。交換品の具体的な配送予定日、印刷可能な返送ラベルと購入証明、そしてさらにサポートが必要な場合の明確な導線。申請後にどうすればいいか迷わないように、エージェントから連絡が来ることを明示しました。
結果
選ばれる解決手段としての定着
67–70%
対象となる購入者における利用率
€27K
1日あたりのGMV創出額 — 返金になっていたはずの注文を救済
87–89%
初期不良を経験した購入者全体のSTAR(満足度)
振り返り
このプロジェクトから学んだこと
01
ドメイン知識を通じで本質的な問題を把握
プロダクト上のUXやUIだけで改善できない課題は、ドメイン知識をステークホルダーから聞き取ることがとても重要です。一次情報を自分で手に入れにいくことで、両サイドのユーザーの本質的な課題が見えてきました。
02
コンテンツを安心材料に
このフローの画面自体は、ごく一般的なEコマースのパターンです。しかし、言葉を工夫することで、ユーザーには安心感を与えられます。
03
情報を開示することで、安心感に繋げる
決済周りの懸念点の確認をはじめ、ユーザーが不安と感じる要素はサービス側が能動的に開示することで、心理的安心を覚えることにつながります。

