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サポートが終了したスマートデバイスに再び命を

使えなくなったスマートデバイス復元の概念実証としての低温調理器アプリをデザイン

カテゴリー

toC Webアプリ

期間

2025年6月 - 2025年8月

マーケット

フランス

役割

プロダクトデザイナー

1. 概要

概念の実証

Back Marketは、既存のデバイス下取りサービスを超えて、ソフトウェアの陳腐化(計画的陳腐化)に対して公的な立場を示したいと考えていました。その立場を具体的なものにするための概念実証(PoC)として、私のチームは低温調理機器のAnova Prcision Cookerの復元を立証するアプリの制作を実行。デザイナーとして参画したこのプロジェクトで、デバイス接続のフロー、調理コントロールのインターフェース、そして全体のプロダクトナラティブを含む、エンドツーエンドのMVPフローの設計を担当。サステナビリティの訴求を、人が手に取り、操作できる体験へと落とし込むことを目標にしました。

2. ディスカバリー

概念を証明するための適切なデバイスの選定

サポートが終了したスマートデバイスは数多くありますが、Anovaの低音調理機器を選んだ理由は、実現可能性、ユースケースの明確さ、そしてストーリーとの一致がありました。

Anovaの低音調理器とは?

低温調理に特化したIoT接続のキッチン家電です。

3. デザイン判断 01

既存のアプリとの連携

このサービス自体は、単独のプロダクトではなく、既存のBack Marketアプリ内で起動する想定でした。Back Marketのアプリはマーケットプレイスであるため、ユーザーの多くは電子機器の購入、もしくは下取りのために訪れます。その慣習を踏また上で本サービスを組み込むには、ユーザーのメンタルモデルを壊さない慎重なユーザー体験の統合が求められました。

既存の情報設計を検討し、「Your Devices」セクションが最も自然な受け皿であると判断しました。ユーザーが再生済みスマートデバイスを登録すると、そのデバイスはここに紐づきます。ここに「このデバイスを復元」アクションを追加することで、既存のメンタルモデルをそのまま拡張できます。ここで購入し、ここで管理し、ここで再生できるのです。

このアプローチにより、別アプリや独立したナビゲーション分岐を新たに設ける必要もなくなりました。そうしてしまうと体験が分断され、ソフトウェアの復元が Back Market の提供価値のひとつにすぎない、という核となるメッセージが弱まってしまうからです。

4. デザイン判断 02

ゆっくりと精緻に温度調節をするためのUIをコンセプトから設計。

低温調理では、時間をかけて正確な水温を保つことが重要です。デザイン上の課題は、本質的にゆっくりと進み、ユーザーの介入も少ないこのプロセスに対して、わかりやすく有用なフィードバックをどう届けるかでした。

私は、調理コントロールの中心となる視覚要素として、水の蒸発を表現したアニメーションを採用しました。タイマーがカウントダウンし、調理が進むにつれて、このアニメーションはデバイスの中で実際に起きていることを視覚的に補強します。抽象的なデータポイントを解釈することなく、進行状況を直感的に感じられるようにしています。

コントロール画面は、明快な階層構造で構成されている。温度は最も重要な要素として、大きく中央に配置。タイマーはそれに続く第二の要素として位置づけられている。ステータスの変化(加熱中、維持中、完了)は色の変化によって伝達され、調理中は温かみのあるトーン、完了時はグリーンで示される。

5. デザイン判断 03

UXライティングとデザインで、「ソフトウェアの陳腐化」を実体化。

このアプリは単なる調理ツールではありませんでした。それは同時にひとつの主張でもあり、あらゆる接点が、このデバイスが一度は使われなくなり、そして再び息を吹き返したのだという印象を強める必要がありました。

UXライティングの観点では、オンボーディングフローが接続の瞬間に文脈を与えます。見出しとマイクロコピーはデバイスの履歴に触れ、ペアリングのプロセスを標準的なセットアップではなく、再生の行為として位置づけています。その言葉遣いによって、ユーザーは目的を持った出来事に参加している感覚を持つようになります。

ビジュアルデザインの観点では、Back Marketのブランドアイデンティティを参照しながらも、より柔らかく、より有機的な要素を加えることで、再生の気配を示しています。美学は、モダンなテックプロダクトと、より丁寧に考え抜かれた何かとのあいだに位置し、機能的に感じられるだけの信頼感と、意図を感じさせるだけの温かみを併せ持っています。

このレイヤーが特に重要だったのは、フォーラムの主な来場者が一般ユーザーではなく、報道関係者や業界関係者だったためです。短時間のブース巡回であっても、UX自体がストーリーを伝えられる必要がありました。

6. プロダクトフロー

端末の接続から、料理の完成まで 。ユーザージャーニーの構築。

Back Marketアプリの「Your Devices」セクションから体験は始まり、ユーザーはデバイスの復元を開始します。オンボーディングフローでは、明確なステップバイステップの案内とともにBluetoothペアリングへ導き、このデバイスの元のアプリはすでに存在しないことを前提に設計されています。

接続後、ユーザーはレシピ主導の体験へ進みます。生の温度・タイマー入力をそのまま提示するのではなく、厳選されたレシピをデフォルトの導線として提供。これにより、低温調理に不慣れなユーザーの心理的ハードルを下げつつ、プロダクトとしての見せ方にも十分な厚みを持たせています。

レシピを選ぶと、温度と時間の設定が自動入力されます。ユーザーが確認して調理を開始し、インターフェースはモニタリング状態へ移行。水分蒸発のアニメーション、リアルタイム温度、カウントダウンタイマーが表示されます。加熱・保温・完了の各フェーズでは、アニメーションと色の遷移の両方で状態変化を伝達します。

調理は、明快な完了状態で締めくくられます。

成果

パリで行われたプレスフォーラムでの展示。メディアの注目を集める。

このアプリは、パリのテックメディアフォーラムにおけるBack Marketのブースでライブデモを行いました。プロダクトマネージャーが、報道関係者や来場者に向けてプレゼンテーションを実施しました。反応は非常に好意的で、この取り組みを取り上げる記事も掲載され、ソフトウェアの陳腐化というメッセージはイベントの枠を超えて広がりました。

このデモは、信頼性のある実動プロトタイプとして説得力を持って受け止められました。議論は、ソフトウェアの陳腐化を問題として指摘する段階から、実践的にどのような対応があり得るのかを示す段階へと進みました。

社内的にも、このプロジェクトは、ソフトウェアの陳腐化が依然として十分に手つかずの市場機会であるという認識を強めました。ハードウェアの再生整備はすでに定着していますが、ソフトウェア領域はまだ未開拓です。このコンセプトは、Back Marketのサステナビリティ・ミッションを次にどこへ広げられるかを考え続けるきっかけとなりました。

振り返り

さらに掘り下げたいこと、そしてこのプロジェクトを通して明確になったこと。

もし時間とリソースがあれば、ソフトウェアサポートを失った実際の Anova オーナーを対象にユーザーリサーチを行い、その具体的な不満をもとにオンボーディングのストーリーをさらに磨き込みたいです。さらに、単一デバイスにとどまらず、放置されたスマートプロダクト群へと広げる可能性も探りたいと考えています。そこにこそ、このプラットフォームの真の可能性があります。そして、実際の調理環境下で情報階層が成立するかを検証するため、調理フローのユーザビリティテストも実施したいです。

このプロジェクトを通して、コンセプト段階におけるデザインの役割について、私自身の認識が明確になりました。アプリは数百万ユーザー規模まで拡張する必要はありませんでした。必要だったのは、アイデアを“伝わる形”にすること——部屋に持ち込み、1分もかからずに、なぜソフトウェアの陳腐化が重要なのか、そしてそれに向き合うことがどのような姿であり得るのかを、人々に理解してもらうことでした。

プロダクトデザイナー

Yusei Matsutomo

所在地

日本

リモート

履歴書

@2026yuseimatsutomo

プロダクトデザイナー

Yusei Matsutomo

所在地

日本

リモート

履歴書

@2026yuseimatsutomo

プロダクトデザイナー

Yusei Matsutomo

所在地

日本

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履歴書

@2026yuseimatsutomo