
良いデザインは、本当に万国共通?
文化的ローカリゼーションを通じて、日本市場のCVRを+4.71%改善
カテゴリー
Eコマース
期間
2024年12月 - 2025年5月
マーケット
日本
役割
プロダクトデザイナー/リサーチャー
概要
背景
フランス発のリファービッシュ品マーケットプレイス、Back Market。クリーンでモダンなUXを武器に、欧州・北米市場でトップの座を確立したプラットフォームです。しかし2023年、日本市場に参入してから1年以上が経過しても、コンバージョンは伸び悩んだままでした。
本ケーススタディでは、西洋向けに設計されたグローバル商品ページを日本市場向けにローカライズし、コンバージョン率+4.71%を達成するまでのプロセスをご紹介します。
グローバル製品ページの画面録画。サイトデザインはモダンで洗練されていました。
2. 発見
ユーザーの問題とは?
パフォーマンス低迷の原因を探るため、まずユーザーの行動とオンラインショッピングへの期待を理解することから始めました。一対一のユーザビリティテストを通じて、現状のエクスペリエンスを直接把握します。

Zoomを用いたオンラインインタビューを、計20名以上に実施しました。
3. 深掘り
日本のデザイン vs 西洋のデザイン
次に、オンラインショッピングにおけるユーザーの期待値をさらに深めるため、競合分析に着手しました。楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピングなど、国内主要ECサイトを調査を行います。

海外ブランドの西洋版と日本版サイトを比較し、情報設計の差異を検証。
日英の楽天サイトを比較


日米のStarbucksのサイトを比較


相違点 ①
情報構造の違い
「日本のウェブデザイン」という概念には、独特の情報構造が伴います。とりわけECサイトにおいては、製品仕様が詳細に列挙され、ユーザーレビューが前景に置かれ、あらゆる要素が単一のページ内に可視化されるよう設計されています。
こうした傾向はブランドサイトにも共通して見られます。余白を積極的に活用し、視覚的な余裕を演出する西洋のウェブデザインと比較すると、日本のサイトは同一のキャンバス上により多くの情報を高密度で配置するという、異なる設計思想に基づいていることが明らかです。
相違点 ②
一本道の設計思想と、全体提示の設計思想
情報の提示方法における違いから気づいたことのひとつが、ユーザーの誘導の仕方です。西洋のデザインでは、余白が各要素を区切り、単一のCTAが次のアクションへと導きます。ページはあらかじめ設定された道筋を辿ることを前提に設計されています。いわば「ローコンテクストなページ」——ひとつのメッセージを明確に届け、次に何を見るべきかはブランドに委ねる、という思想です。
一方、日本のデザインには単一の導線がありません。ユーザーを誘導しようとしていないからです。デザインが目指しているのは、ユーザー自身が判断を下せるだけの情報を提供することです。余白が消えるのは、ここでは空白が安心感をもたらさないからです——それはむしろ、文脈の欠如を意味します。
こうした違いは、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の差異に起因していると考えられます。詳しく知りたい方は、エドワード・T・ホールのこちらの論考をお勧めします。

ハイコンテキストとロウコンテキストの情報処理
エドワード・T・ホールのハイコンテクスト/ローコンテクスト・フレームワーク:ハイコンテクスト
4. 仮説
文化的配慮の欠如が生んだ「不信感」
リサーチで得たインサイトをもとに、一つの核心的な課題に絞り込みました。ーー「信頼の欠如」です。
日本のカスタマーがサイトでの購入に安心感を持てなかった背景には、文化的な配慮が十分でなかったことがあります。すべてを一覧し、全体を俯瞰したうえで評価し、納得できる根拠があってはじめて信頼する——そうしたハイコンテクスト市場の判断プロセスに対して、ローコンテクスト型の体験設計に基づく西洋のデザインをそのまま適用してしまっていたのです。
5. ソリューション
体験構造を文化的理解から捉えることで、不信感を解消する
コアエクスペリエンス
商品ページのコアとなるエクスペリエンスは、コンフィギュレーションです。状態、カラー、ストレージなど、各項目の選択を自在にカスタマイズする工程です’。
グローバルページの設計では、ユーザーを段階的に誘導し、1画面につき1つの選択に集中できるようにしています。しかし、このモデルは、サービス側が進行の道筋を強く規定する、ローコンテクストなコミュニケーションを前提としています。日本版(下の右側の画像)では、2×2のグリッドを用い、スクロールごとに2〜2.5の選択肢を配置しました。これにより、ユーザーは文脈を伴って情報を把握でき、全体を見渡しながら設定を進められます。


ランディングビュー
ランディング画面にも大きな変更を加えました。サステナビリティ訴求に代えて「認証済みリファービッシュ」のラベルを配置し、デバイスがリファービッシュ品であることを明示しています。これにより、日本における「リファービッシュ認知の低さ」という課題に直接対応しました。
また、ATCボタンの色をブラックからBack Marketのブランドカラーであるミンダロ(mindaro)に変更しました。日本のECサイトではCTAに明るい色が用いられる傾向があるというリサーチの裏づけもあり(Amazonのオレンジ・イエロー、楽天の赤など)、この方針を採用しています。色のコントラストが低くなるという課題は認識しつつも、今回は実験的な施策として実施しました。
ファネル分析
ユーザーリサーチと競合分析のインサイトをもとに、「多くのユーザーはレビューまでスクロールしたところで離脱しているのではないか」という仮説を立てました。この知見を活かし、レビューセクションよりも前の位置に、端末の状態に関するガイダンス・バッテリー情報・端末スペックといった、ユーザーに確認してほしいコンテンツをすべて集約しました。
ローカライズされたコンテンツ
日本のECサイトでよく見られるランキング機能を導入するとともに、リファービッシュ工程・保証情報・会社情報といった日本語コンテンツを新たに追加しました。いずれも、日本の顧客との信頼関係を築くことを目的とした施策です。

結論
成果はA/Bテストで検証
成果を測定するため、3か月間にわたり50/50のトラフィック分割によるA/Bテストを実施しました。日本市場で十分な検証ボリュームを確保するために必要な期間です。コントロールは既存の本番ページ(グローバルデザインに日本語翻訳を適用したもの)、バリアントは新たにローカライズしたページです。以下の結果は、ローカライズが有効なアプローチであったことを裏づけています。
総合CVR:+4.71%
モバイルCVR:+4.08%
デスクトップCVR:+6.45%



